青果物の輸送・貯蔵技術
品質に影響を及ぼす温度、湿度、振動衝撃を、一般的には低温(定温)、高湿度、低振動衝撃加速度といった条件に制御することが肝要である。
長距離輸送においてトラック輸送から鉄道や船舶へ転換するモーダルシフトは、ドライバー不足への対応、温室効果ガス排出削減貢献などから重要である。
ただし、door to doorの輸送においては、トラックの利用が不可欠で、シフト後の輸送形態は、マルチモーダルとなる。
貯蔵においては、温度、湿度、ガス組成を、青果物の特性に合わせて適切に制御する必要がある。
低O2、高CO2にガス組成を制御するCA貯蔵は、りんごの他、野菜への導入が進んでいる。
簡易で類似効果のあるMA包装も利用されている。
中略
まとめ
1.物流とは
「物資を供給者から需要者へ、時間的、空間的に移動する過程の活動」と定義されている。また、より具体的には、「一般的には、包装、輸送、保管、荷役、流通加工および、それらに関連する情報の諸機能を総合的に管理する活動」、とされている。物流の諸活動の中で、輸送は、空間的な移動に伴う場所的価値の創造に最も貢献するものである。一方の貯蔵は、保管による時間的な移動に伴う販売時期の変更、販売期間の延長による価値の創造に貢献すると同時に、熟成等の品質向上効果を併せ持つ場合がある。
2.輸送モード・ユニットロード
青果物の産地から(広義の)市場への出荷、すなわち輸送には、陸上輸送、水上(河川および海上)輸送、航空輸送が利用される。実際の輸送を担う輸送機関としては、陸上輸送には自動車と貨車、海上輸送には船舶、航空輸送には航空機がある。これらの各輸送のうち、自動車は非常に利便性の高い輸送、鉄道は中・長距離の安定した輸送、船舶は大量輸送、航空機は高速輸送、という特色がある。 複数の物品または貨物を、機械および器具による取り扱いに適するように、1つの単位にまとめた貨物を、ユニットロードと呼び、この目的に合致する1個の大型の物品もまた、ユニットロードと呼ぶ(JIS Z 0111)。貨物をユニットロードにすることによって、荷役を機械化し、輸送、保管などを一貫して効率化する仕組みを、ユニットロードシステムという。ユニットロードシステムは、パレチゼーションとコンテナリゼーションとによって実現される。
3.トラック輸送と品質保持
低温輸送用のトラック(冷凍車)を含めて、輸送機関が有する冷却能力は、侵入熱の除去と想定する輸送温度における呼吸熱の除去を目的に設定されている。したがって、青果物は、積載前に輸送温度まで予冷することが不可欠である。輸送時にトラック荷台に発生する振動・衝撃は、青果物に損傷を生じさせることから、適切な緩衝包装を施す必要がある。
4.トラック以外の輸送と品質保持
鉄道コンテナ輸送における品質保持対策としては、クールコンテナの利用があげられる。また、保冷コンテナ、ドライアイスの利用なども行われている。鉄道輸送へのモーダルシフトには、環境負荷の低減とドライバー不足の解消という2つ役割が期待されており、今後もその点についての変化はないであろう。生鮮物の海上輸送に用いられるのが冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)で、-25~+25 ℃の温度範囲を0.1 ℃単位で任意の温度設定が可能であり、ほとんどの青果物は冷凍コンテナによる輸送となる。航空輸送における低温輸送には、保冷コンテナと呼ばれるユニットロードデバイスが利用される。
5.貯蔵の目的
貯蔵は、保管による時間的な移動に伴う販売時期の変更、販売期間の延長による価値の創造に貢献すると同時に、熟成等の品質向上効果を併せ持つ場合がある。より具体的には、貯蔵は、青果物の変質に関わる環境要因を適正に制御し、品質保持、安定供給を図るために行われる。
6.貯蔵の方法
温度制御の有無により、低温貯蔵と常温貯蔵に大別される。低温貯蔵は、外気温度に影響されずに目的とする温度を一定に保つ貯蔵方法である。常温貯蔵は、低温外気、雪氷などの自然冷熱蓄熱材の利用などにより、外気の影響を緩和して青果物の品質変化を維持する貯蔵方法である。低温温度管理に加えて気体組成を低酸素、高二酸化炭素条件に維持する貯蔵方法としてCA貯蔵があり、りんごを中心に利用されてきたが、近年では野菜への利用も進められている。MA包装は、CA貯蔵で必要なガス制御機器を用いずに、青果物の呼吸と包装資材のガス移動特性をバランスさせてガス組成を適切に維持する品質保持方法で、出荷包装への利用が中心であったが、最近では長期貯蔵への利用も進んでいる。
7.貯蔵庫内の管理
多くの青果物の貯蔵においては、高湿度維持が不可欠である。そのためのシステムとして、ブライン冷却方式、二元調湿換気方式(ジャケット方式)、壁面冷却方式、フィルム包装などの技術開発の他、最近では水を冷媒として利用する冷却方式や結露が生じない簡易な加湿器も開発されている。微生物管理も重要で、殺菌技術に関する研究開発が行われているが、研究開発途上であり、生産段階での防除、収穫後処理における汚染防止が重要である。
参考文献
- 五十嵐脩・小林彰夫・田村真八郎編,丸善食品総合辞典,丸善,1144-1146,1998
- 梅沢昌太郎,食品流通システムの機能と構造(食品流通技術ハンドブック), (社)食品流通システム協会,30-49,1989
- 黒田長治,食品の定温流通,光琳書院,東京,1973
中略
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