うんしゅうみかんの最適貯蔵温度は他の果物や野菜と異なり、5 〜7℃とやや高く、また、最適な貯蔵湿度も85 〜90%であるため、船を利用した他の青果物との混載輸送はできない。
他の果物と混載すると、多くは他の果物の最適温度である1℃、95 〜98%に設定されるため、混載されたうんしゅうみかんでは、低温障害や浮皮が発生し、品質が低下する。
しかし、浮皮のない、健全な早生うんしゅうを1週間〜10日間程度の輸送を行うならば、1℃ 95%でも、低温障害もなく、浮皮の発生もごくわずかで輸送できる。品種や果実の状態をしっかり把握して輸出することが重要である。
解説長谷川 美典 農産物流通技術研究会
中略
4. 輸出の実際、問題点
1)他の果物との混載はできない
うんしゅうみかんの最適貯蔵温度は他の果物や野菜と異なり、5 〜7℃とやや高いため、船を利用した青果物輸出の際に利用されている、他の青果物との混載はできない。 また、最適な貯蔵湿度も98%以上が最適な多くの果物と異なり、うんしゅうみかんは85 〜90%となっており、これもうんしゅうみかんが混載できない要因となっている。
したがって、輸出をする際に、他の果物と混載すると、多くは他の果物の最適温度である1℃、95 〜98%に設定されるため、混載されたうんしゅうみかんでは、低温障害や浮皮が発生し、品質が低下する。
数十年前の話であるが、アメリカ東海岸までうんしゅうみかんを1 ヶ月ほどかかって船輸送し、追跡調査を行ったことがある。10ftのコンテナでの輸送であったが、うんしゅうみかんの10kg段ボール箱詰めでは浮皮が大量に発生するとともに、腐敗も多く見られた。3.5kg程度の小箱で、コンテナの壁面には吸水剤(紙おむつ)を張り付け、コンテナ内の湿度を上げないように処理した場合は、浮皮の発生をある程度抑えることができた。
しかし、浮皮のない、健全な早生うんしゅうを1週間〜10日間程度の輸送を行うならば、1℃95%でも、低温障害もなく、浮皮の発生もごくわずかで輸送できる。品種や果実の状態をしっかり把握して輸出することが重要である。
2)段ボール強度の重要性
船輸送の場合、比較的長期間の日数、コンテナ内に封鎖される。段ボール箱内では果実の呼吸や蒸散により、湿度が高くなり、結露する場合もある。段ボール箱が吸水して強度が弱くなり、座屈する場合がある。
うんしゅうみかんでは1 箱の中に入れられる量が重く、この箱が何段も重ねられた場合、下の方の段ボール箱が座屈することになる。
3)短期間輸送、早生温州の輸出
うんしゅうみかんも輸出量が増え、8 〜10月頃に早生うんしゅうみかんを香港やシンガポールなどへ輸出する事例が増えてきた。これらは特段何の制御もしなくても、他の果物と混載で、1℃の温度で健全に輸出できている。
この場合は、船輸送であるが、輸送期間は1 週間〜10日間程度であるので、1℃ 95%でも、低温障害もなく、浮皮の発生のごくわずかで輸送できる。
4)輸出相手国の植物防疫、残留農薬基準
数十年前、カナダへうんしゅうみかんを船輸送した。カナダの港で残留農薬のチェックを受け、ある農薬が0.03ppm検出された。当時から、カナダではポジティブリスト制が採用されており、0.01ppmの基準値以上と言うことで、コンテナの全てのうんしゅうみかんが廃棄されることとなった。
当時からカナダ向けうんしゅうみかんは相手国の農薬基準に合わせた農薬散布をしており、検出されるはずの無い農薬であった。
いろいろ調べた結果、国内向けうんしゅうみかんと同じ選果機を用いて箱詰めをしたとのことで、選果機に残留していた農薬がうんしゅうみかんに付着したものと推測された。
こんな所にも注意が必要である。
5)その他のかんきつ類
「不知火」(デコポン)などのかんきつ類(中晩柑類)も輸出が増えてきた。これらは厳密にいえば品種ごとの適正保存条件が異なる。したがって、品種ごとに条件を示す必要があるが、品種数も多く、十分な検討がされてないものも多い。基本的にはうんしゅうみかんの輸出条件にならって行えばよいと思われる。
参考文献
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