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青果物 品質保持・栽培・流通
管理マニュアル

日本青果物輸出促進協議会
日本青果物輸出促進協議会 Japan Fruit and Vegetables Export Promotion Council
栽培・流通管理マニュアル

いちご(病害虫対策)編

監修 農林水産省農産局園芸作物課

/国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門

1.改訂版の発行にあたって

 平成27年に「輸出相手国の残留農薬基準値に対応した生果実(いちご)の病害虫防除マニュアル(詳細版)」が公開されてから、既に8年が経過した。平成27年の生果実(いちご)(以下「いちご」という。)の輸出量は408tでその輸出額は8億4,894万円であったが、令和4年のいちごの輸出量は2,183tでその輸出額は52億4,164万円と、この8年間で輸出量は約5倍、輸出額は約6倍に増加した。
 平成27年からの8年間に、日本国内でいちごに適用がある農薬に関しても、新たに登録された農薬や登録が失効した農薬がみられること、さらに台湾においても我が国や他の生産国からのインポートトレランス申請に対応して残留農薬基準値の設定及び見直しが行われてきたことから、「台湾の残留農薬基準値に対応した生果実(いちご)の病害虫防除マニュアル(改訂版)」を新たに作成することとした。
 特に改訂版においては、残留農薬基準値の超過事例が問題となっている台湾を対象として、日本と台湾における残留農薬基準値の相違を更新し、台湾向けの輸出用いちごの病害虫防除マニュアルを策定することとした。

 また、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(輸出促進法)が令和2年4月1日に施行された。この中で、輸出の仕向地となる国・地域を輸出先国と呼称していることから、本改訂版においても輸出相手国としていた呼称を輸出先国に改めることとした。
 各国ではその国の法律に基づいて農薬の安全性が評価され、適正な使用法が確立されている。国によって、気候・風土・栽培体系・発生する病害虫の種類等の違いにより農薬の使用基準が異なるため、国間で残留農薬基準値が異なることがあるが、これは健康へのリスクの大小を意味するものではない。日本で登録及び使用されていない農薬であっても、海外で使用可能であり輸入食品に残留する可能性のある農薬については、インポートトレランス申請に基づき、食品健康影響評価によりADI及びARfDが設定され、当該国の適正使用に基づく作物残留試験結果に基づき、適切な基準値を設けることで、輸入農産物の流通に支障をきたすことのないよう配慮がされている。

 台湾においても、農薬の毒性試験結果等に基づく食品健康影響評価及び作物残留試験結果に基づく残留農薬基準値の設定により、輸入農産物の流通に支障をきたすことのないように配慮がされている。日本等のメーカーからのインポートトレランス申請に基づいて審査が行われることで、適正な残留農薬基準値の設定が進んでいる。

 また、台湾向けいちごの輸出に当たって、台湾が関連規則において設定している残留農薬基準のうち、「-(不検出)」(検出限界未満)や0.01ppm、0.02ppmといった極めて低い基準値への対応、さらには日本の基準値よりもわずかに低い基準値への対応といった輸出先国の残留農薬基準値に合わせた防除体系の策定が不可欠である。

 以上のような背景を踏まえて、「輸出相手国の残留農薬基準値に対応した生果実(いちご)の病害虫防除マニュアル(詳細版)」(平成27年8月)の改訂を行うこととした。
 本マニュアルは、台湾における超過事例を中心に、超過となった農薬の残留値の実態を明確にすることで、いちごの輸出促進に向けた防除体系策定の取り組みに資するものとする。

2. いちごの生産で問題となる病害虫

(1)病害:炭疽病菌、うどんこ病菌、灰色かび病菌

(2)害虫:ハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ類、チョウ目害虫

中略

5.日本産のいちごサンプルにおける農薬の減衰と散布後日数の関係

(1)殺菌剤の残留農薬の減衰傾向

(2)殺ダニ剤、殺ダニ・殺虫剤、殺虫剤の残留農薬の減衰傾向

中略

6.台湾の残留農薬基準値と農薬使用方法について

 いちごの輸出においては、輸出先国を選定したうえで残留農薬基準値に対応した病害虫の防除体系を策定する必要がある。特に、台湾の残留農薬基準値(MRL)が「-(不検出)」や極端に低い残留農薬基準値(不検出≦MRL≦0.02ppm)である場合は、農薬散布の収穫前日数を75日以上とすることで対応する必要がある。
 ニュージーランドにおける輸出先国の残留農薬基準値への対応では開花前に限定した使用といった考え方がある。日本のいちごでは冬季において開花後40 ~45日程度で収穫となることから、仮に農薬の使用期間を開花前に限定した場合でも残留農薬が検出される可能性があるため、多くの散布剤でみられた散布50~100日後の中間として75日後以上がひとつの目安と考える。
 また、残留農薬基準値(0.02<MRL≦0.09ppm)での対応も困難と考えられるが、収穫前日数を30日以上とすることで対応可能な場合がみられる。さらに、残留農薬基準値(0.1≦MRL≦0.99ppm)の場合には散布翌日や数日後の収穫ではなく、散布7~ 10日後の収穫とすることで対応できる可能性がある。残留農薬基準値(1ppm≦MRL)の場合には、多くの有効成分で日本の残留農薬基準値の20%~同等の値となることから、収穫直前に散布を行わないことで問題が生じない可能性が高いが、これらの判断は生産者自らが行う必要がある。
 まず、防除対策の考え方として、....

中略